土屋きみやす−ツッチーレポート

2015年10月22日(木) 12:48

今年も明治大学から講義の依頼がありました。

 富士山麓でキノコ狩りをしていた9月末、ちょうど創造の森という広々とした芝生の広がる公園で仲間たちと持ち寄りのランチを食べようとしていた時に、昔からお世話になっている明治大学教授のU教授から「急で申し訳ありませんが、来週の火曜日から3回連続で講義をお願いできませんか?」という電話がありました。
 一度電話を切りスケジュールを見てみたら、入っていた予定はすべて日程変更が可能なものであったのでよろこんでお受けした。

 ちょうど安保法案の問題がニュースになっていた時でもあり、3回目は「今こそ憲法について考えよう。」というテーマでやらせていただいた。



 以前、書店で『白洲次郎の日本国憲法』(鶴見紘著・光文社知恵の森文庫)という本を見つけ買い求め読んだのは吉田茂のブレーンだった白洲次郎であるから現行憲法の成立にも関わっていたであろうという事と、彼のライフスタイル(ケンブリッジ大学留学による英国仕込みの価値観、車へのこだわり、白いTシャツにブルージーンズというファッション、軽井沢ゴルフクラブでのゴルフ・ライフに対する哲学、鶴川の「武相(ぶあい)荘」での生活、白洲正子の亭主、などなど)に対する興味からであった。
 この本には車の趣味が案外詳しく書かれており(ベントレー、ブガッティ、ランチャ・ラムダ、ランド・ローバーなど)、あっという間に読了した。  もちろん、新憲法制定時の日米交渉などが興味深かった。

 その後、東大教授加藤陽子さんが神奈川県にある栄光学園での講義を基にした本『それでも、日本人は「戦争」を選んだ』(朝日出版社)を読んだ。
 幕末から明治、そして現代に至る歴史の中で、どうも私には遠い存在の日清戦争、日露戦争、第一次世界大戦を知りたかったからである。
 歴史そのものも解り易く面白く、とても勉強になったが、中にジャン=ジャック・ルソーの、邦訳されていない論文「戦争および戦争状態論」の紹介があり、その存在を知りとても嬉しかった。というのは、以前、成蹊大学の或る教授に「土屋市長の政治手法(住民参加型)はジャン=ジャック・ルソー型である」と、大和市自治基本条例についての本『ドキュメント 市民がつくったまちの憲法』(ぎょうせい)の書評で書いていただいて以来、ルソーには強いシンパシーを感じているからである。




 ―閑話休題―

 そこからそのルソーに関する記述があるという『憲法とは何か』(長谷部恭男著・岩波新書)を買って読んだ。
 ついでに、昔『日本政治思想史研究』を読んで以来、大いに関心のある丸山眞男に関する本『丸山眞男の時代 大学・知識人・ジャーナリズム』(竹内洋著・中公新書)も読み進めた。

 ちょうど明治大学の講義の前には安保法案がニュースになっており、またぞろ“現行憲法はGHQ(連合軍総司令部)に押しつけられた憲法だから改正すべきだ”というような議論が出てきた事もあり、改めて、そうではない事を調べてみた。
 要するに、白洲次郎の本にもあるが、幣原内閣の憲法問題調査会(委員長:松本丞治国務大臣・弁護士)の原案は、第1条から第4条まで明治憲法の天皇と同じ主権・統治・男系継承・不可侵・元首・統帥権などが謳われており、これに対してマッカーサーは三原則(@天皇の規定、A国権の発動たる戦争の禁止、封建制度の廃止)を示した。
 この時、憲法研究会という会からGHQや政府に提出された「憲法草案要綱」が現行憲法のベースになっているのである。
 この憲法草案要綱のベースになっているのが、明治の初めに提案された植木枝盛の「東洋大日本国国憲按」や立志社の「日本憲法見込案」など私擬憲法20余りと、フランス憲法(1791)、アメリカ合衆国憲法、ソ連憲法、ワイマール憲法、プロイセン憲法なのである。
 “私擬憲法”といえば“五日市憲法”を思い浮かべるが、これは発見されたのが昭和43年・1968年だから現行憲法には活かさてはいない。しかし、大いなる関心がある私擬憲法について、私は改めて『ガイドブック 五日市憲法草案 日本国憲法の源流を訪ねる』(鈴木富雄著・日本機関紙出版センター)も読んでみた。同時にもう一冊、『自由民権思想の研究』(増補・改訂松尾章一・日本経済評論社)も読んだ。

 憲法の改訂(正?)をしたい安倍政権(「憲法改正」は自民党の党是)の今の日本で、重要なのは、“憲法を考える”事なのである。

 私にとって、日大闘争や安田講堂事件の学園紛争の真っ只中だった1960年代に立て看板だらけだった明治大学で、今この現在、憲法について講義出来るという事に感慨深いものがあった。

 ついでに書く。

 「第9条の発想者は、幣原ではない。マッカーサーでもない。天皇の人間宣言詔書が真の発想者だ。」
 (憲法案策定委員チャールズ・L・ケイディス)

 もう1つ。

 「近代日本の黎明期に生きた人々の、政治参加への強い意識や、自国の未来にかけた熱い思いに触れ、深い感銘を覚えたことでした。長い鎖国を経た19世紀末の日本で、市井の人々の間に既に育っていた民権意識を記録するものとして、世界でも珍しい文化遺産ではないかと思います。」
 「(五日市憲法」についての皇后美智子さまのお言葉。)

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